気持ち悪い奴、恐怖体験

3月29日 水曜日

2166日目 Peru Huaraz to Cebollapampa

朝4時30。

真っ暗な中ゴソゴソと準備をし、部屋を出る。

全ての荷物をパッキングしたバックパックは全ては入り切らず、もう一つ手提げも持っていく羽目になった。

流石に食料持ちすぎたかな?

5日分の食料だし、少し余裕を持って準備したから凄い量になってしまった。

何より寝袋がデカ過ぎる。

レンタル費用を抑える為に、まぁまぁの性能のシュラフに加え、自分が普段使ってるシュラフも持って行く。更にテントも1人用の良い奴は高いので、結構な大きさと重量がある。テントは外に付けてるけど、このシュラフだけでバックパックの半分は埋まってしまう。

バックパックを背負うとかなりの重量。

20キロ以上ありそうだな。

これ大丈夫かな…

今日行く予定のラグナ69は4600メートルにも及ぶ。不安がよぎるが、もうこれで行くしかない。

コレクティーボ乗り場へ行くと朝早くから威勢よく叫んでいた。

「カラス!カラス!カラース!!」

「ユンガイ?」

俺はユンガイに行きたいので、カラス行きに乗り途中で降りるって感じか。

ある程度人が集まったら出発し、更に途中でも人を拾ったり降ろしたりしながら進む。

1時間ほどでユンガイのコレクティーボ乗り場に着き、ここで腹ごしらえしておこうとサンドイッチで軽く朝ごはん。

次はバケリア行きのコレクティーボに乗り込み、ナショナルパークに入る為の登録と支払いを済ませ、Cebollapampaで降りる。

コレクティーボを降りるともう目の前には絶景が広がっていた。

朝は生憎の天気で、霧深く、雨も降っていたけど、車を降りた時には青空も顔を出した。

一緒に降りたおじさんがここのキャンプ場の管理人?みたいなことをしているらしく、

「15時までなら此処にいるから荷物見といてあげるよ、身軽になってからラグナ69に行くといい」

と、ありがたいことを言って頂いた。

と言うのも、最初からこのキャンプ場にテント立てて荷物をデポしてから行こうと思ってたけど、レンタルした時に言われたのが、

「テントは絶対に置きっぱなしにしちゃ駄目だよ。牛にやられるからね。だから荷物も必ず全部持ってラグナ69まで行ってね」

と念を押されていた。

だからラッキー。

早速湖を目指して歩き始める。

道は結構ぬかるんでたり、水気も多く、昨日靴直しておいて良かった、と改めて感じる。

あのまま来てたらトレッキング開始5分で俺の靴はぐちゃぐちゃのびちゃびちゃになっていた。

荷物も置いて身軽だし余裕だろー、とたかを括っていたこのラグナ69トレッキングだけど、標高もスタートからすでに4000メートルを超えているのでかなりしんどい。

基本的に登りが続くので、だんだんと酸素も薄くなっていく。

もう2、3分歩いたら止まって息を整える、また少し歩いて息を整える、の繰り返し。

これフル装備の荷物持ったままだったら完全に死んでた。

ちょっと舐めてたな…

ほとんど荷物持ってない状態でこれだったら明日とかどうなっちゃうんだろう。。

標高5000メートル以上の山は前にも歩いたことあるし大丈夫だろうと思っていたけど、その時はもっと刻みながらだったし、今回はまだ高度順応が追いついてないのかな。

ワラスは3000メートルくらいだから、今日1日で一気に1500メートルくらい上がる。

高山病対策に水分を小まめに摂りながら少しずつ少しずつ登っていく。

景色は素晴らしい。

そして、3時間弱かかって到着。

コバルトブルーの綺麗な湖。

陽射しも出てて気持ち良いなぁ。

でも来るだけで相当疲れた…陽射しに当たりながら気を抜くと眠ってしまいそうだ。

それに時間もあまり余裕がない。

おじさんが家に帰る15時までには戻らないといけない。

他のツアーで来てる人たちもおそらく15時とかがバスの時間なのか、皆んなそそくさと引き返していく。

帰りはほとんど降りなのでよっぽど楽だ。

でも天気がずっーと安定しなくて、雨降ったり晴れ間が見えたりってのを繰り返していて、服も濡れてしまい身体も冷えてきた。

何とかギリギリ15時前には戻って来れた。

人によってはこっからバケリアまで移動し、次のキャンプ場があるPariaまで行く人もいるらしい。化け物やん…

既に満身創痍でフラフラの俺は勿論そんな元気もなく今日はこのままここで休む。

レンタルしたテントなのでちょっと時間がかかりながらなんとか設営完了。

やっと休める。。

晴れ間が出てる内に雨で濡れてしまった服や靴を少しでも乾かしながら、とりあえず一服しようとコーヒーを準備していた。

すると目の前を俺のズボンをモシャモシャ食べながら牛が通りすぎる。

「ちょっ!おい!おい!何やってんだ!待てコラ!」

追いかけるとしばらくズボンを咥えながら逃げる牛、ようやくズボンを離す。

泥々になってしまったズボン、拾いあげると奴のヨダレでベチョベチョだった。

おい…これしかズボンないんだって…

何してくれてんだよ……

奴は一定の距離を保ちながらジトッとこっちを見ている。まだズボンを奪うチャンスを伺っているような気持ち悪い目付き。

奴を威嚇しながら川でズボンを洗う。

あーもう、これしかないのにどうすんだよ…

もう絶対渇かないだろ…

洗ったズボンを木に引っ掛かけて、出来上がったコーヒーと一緒にとりあえず煙草で一服しよう。

するとまた気配を感じてパッと横を見るとまた奴が俺のズボンをむしゃむしゃと咥えながら逃げて行った。

「おい!いい加減にしろよ!待てコラ!!」

ちくしょう!結構早い!ズボンは離さないし追いつけない!

大分追いかけていったあたりでやっと離したズボンを拾いあげると、またドロドロのベチョベチョ。

この野郎!!!

そしてまたつかず離れずの距離でジトッと気持ち悪い目付きでこっちを見てくる。何なんだコイツは!?こんな気持ち悪い牛は今まで見たことがない。

普通牛って近づいたら逃げるのに、こいつはかなり近寄っても逃げないどころか、自分の鋭いツノをこっちに向けて今にも刺してきそうな雰囲気すらある。

もう恐怖心が湧いてきた。

コイツマジで危ない。

いつその鋭いツノでテント突き破ってくるか分からないし、そんなんで体当たりされたら命に関わる。もう気が気じゃない。

奴は嘲笑うかのようにずっとテントの周りをウロウロし、時々こっちをジトッと見てきてまるでいつでもやってやるぞとでも言わんばかりの態度。

もういつまた奴が襲ってくるか分からない恐怖で、何度も何度も外を確認する。

奴はずっと近くをウロウロしてて時おりジトッっとした気持ち悪い目付きで見てくる。

気持ち悪ぃ。

マジで何なんだコイツは。。もう怖い。

疲れてるのに全然休めねぇ。。

何度も外を警戒し気を張っていたが、しばらくして奴は俺の視界から姿を消した。またいつ戻ってくるかも分からないが今のうちに夕飯食ってしまおう。

今回はワインを持って来ている。

軽く一杯やりながらラーメンを作る。

綺麗な大自然の中、たった1人でお酒を飲みながら夕飯の準備。本来なら最高すぎるシチュエーションなのに、奴のせいで気が気じゃない。天気も悪いし。

今日に限ってはたった1人、この場所に自分しかいないこの状況が少し不安なくらいだ。

この奇妙な牛は、一体俺に何を気づかせようとしているんだろう。

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