6月1日 木曜日
2231日目 茨城県鉾田市~北茨城市
朝7時頃、テントから顔を出すと朝から近くには結構人がいてほがらかな雰囲気。
誰もこんなところでテント泊してる汚い男のことなんて気にせず井戸端会議をしている。

荷物をまとめ、トイレで顔を洗い、さぁ行こう!…と思ったけど今は通勤の時間。きっと皆んな会社に行くとかの人ばかりだろうと、セブンイレブンで朝のコーヒーを飲みながらもう少しのんびりすることに。

店内を色々物色してると本当に何でも売ってるよなぁと感心する。
それにしても日本の物価鬼安くない?


焼酎やワイン、ウイスキーとかビックリするくらい安い。
ビールや酎ハイとかの大きな缶も僅か100円ちょっととかで買える。
ワインなんて1本500円とかで買えるし、700ミリとかの焼酎やウイスキーが700円から1000円くらいで買える。
ちゃんとしたスコッチウイスキーとかも僅か1000円ちょっととか。
ニュージーランドだったら4000円くらいするし、他の物価の安いと言われている諸外国でももっと高いよ。
コーヒーのラージサイズと、クロワッサンを1つ買って300円くらい。
セブンイレブンの支払いも機械でのセルフレジになってた。


コーヒーも普通に美味しいな。
だけどクロワッサンは悪い油使ってんだろうなって味だし、芳ばしい良い香りや風味なんてカケラもなく、ベチャっとした油ギトギトのゴミみたいな味だった。
出発前にトイレしておこうとセブンイレブンのトイレを借りる。

トイレ綺麗だしなんか便座暖けぇ。。
勿論ウォシュレット完備。
でもペーパー捨てるゴミ箱ねぇじゃんかよ、と思ってたらトイレにそのまま流せるんだった。。
セブンイレブンの出口に立ってヒッチハイク開始。やっぱり皆んな怪訝そうな顔で見てくるな。
だけどものの15分くらいで1台の車が止まり、水戸の方まで乗せてくれると言う。
立派な新しいランクルに乗っていたはなわくんはまだ19歳の若者で、専門学生。学校に向かってる途中で俺を見かけてわざわざ戻って来てくれたそう。
遅刻してしまわないかと心配になったけど、もう遅刻してるし少しくらい大丈夫ですよ、と笑っていた。
建築会社を営む家系の息子で、彼自身、家を継ぐために建築の学校に通い、卒業したら別の会社で修行を積み、将来は家の仕事を継ぐと言う。
自分の将来がもう決まっていて他の選択肢なんて考えたこともないと言っていた彼は、海外の放浪の旅から帰ってきたばかりの俺の話しが刺激的だったみたいで色々質問された。
余計なこと言っちゃったかな?
まぁ色んなこと経験して自分の人生は自分で決めれば良いさ。
はなわくんと楽しく会話しながら、学校近くの水戸の6国沿いで降ろしてもらった。
ここからなら北上する車が多いからヒッチハイクもしやすいだろうと、こんなに若いのにそんなとこまで気を使ってくれる。
はなわくんありがとう、建築の勉強頑張れ。

車通りが多かったので、少し歩いて車を止めれそうな場所まで移動し、ガソリンスタンドの前でヒッチ再開。


するとまた30分も経たないうちに1台の車が止まり、
「何処まで行くの?」
「北茨城市の方に行きたいんです、でも北の方なら何処でも大丈夫です」
少し北の方の那珂町に用事があったらしい小野瀬さんが少ししか乗せてやれないけどと拾ってくれた。
優しさの中に厳しさを併せもったような雰囲気の初老の男性の小野瀬さんは、これでヒッチハイカーを乗せるのは人生で3度目だと言っていた。
「何で僕を乗せてくれたんですか?」
そう尋ねると、
「何か気になってね、変な奴は乗せたくないけど、何となく止まったんだ。話し相手も欲しかったし」
何故旅に出たのかとか質問してくれて色んな話しをし、小野瀬さんは何処か遠くの方を見つめながら優しい瞳で、
「じゃあ次はちゃんと親に感謝を伝えないとな」
そう言って降り際に水と缶コーヒーをくれた。小野瀬さん、ありがとうございました。

本当皆んな優しいな。
缶コーヒーを片手に一服し、準備万端。

音楽を聞きながら親指をあげる。
何かもう無敵の気分で、何でも出来る気がした。皆んなの優しさが嬉しくて、音楽を聞きながら踊りながらヒッチしてると、中には笑いながら乗せれなくてごめんねー、ってな感じで通って行ったり、雰囲気は良い。
また30分くらいすると1台止まり、
「何処まで?北茨城市の方?まぁ何処でも良いよ、当てもなく走ってただけだからさ」
マジかよ。
日本人優しすぎるよ。。
昨日から全然30分以上も待たずに皆んな乗せてくれる。
おじいちゃん2人組の阿部さんと滝本さん。
2人とも無職で仕事もないし、2人で当てもなくプラプラドライブしていたみたい。
そこに俺も加わり、無職の大人3人で小さな車にパンパンに乗りながらのんびり北の方へとドライブ。
もう訛りすぎて聞き取れない言葉も多かったけど、2人のマッタリした雰囲気が凄く心地良かった。
だんだん地元が近づいてきてもう外の風景は見慣れた景色になってきた。
新しく出来たものはほとんどなく、逆に潰れた店は多い。昔とあまり変わらない風景だけど、なんだか全てが色褪せて、こんなに暗い街だったかと感じる。廃れた廃墟みたいだ。
日立に入り、ちょっと休憩ね、と言って滝本さんはガストに車を止めた。
すると、
「腹減ってるだろ?好きな物頼みな。恩うっておけばもしかしたら将来何かあるかもしれないしな、ハッハッハ」


もう、、皆んな優しすぎるよ。。
有り難くお言葉に甘え、お腹いっぱい食べさせてもらった。
ロボットが料理運んできたし。
それからも狭い車にぎゅうぎゅうでドライブする無職のおじいちゃん2人と、もう若いとは言えない乞食の3人組。
「両親には今日帰るってこと伝えてあるの?」
「伝えてないんですよ。旅してる間もろくに連絡取ってなかったし、もしかしたらもう見捨てられてるかも。そん時は森にでも行ってひっそり暮らしますよ」
「そん時は家に来て俺たちと一緒に住めば良いよ、ネズミもいるけどな、ハッハッハ」
そんな冗談を言いながらおじいちゃん2人組と乞食のドライブは続く。
「ところで何処まで乗せてってもらえるんですか?」
「家まで送って行ってあげるよ、どうせ行くとこもないし。君ツイてるね」
「ありがとうございます。僕めちゃくちゃツイてるんですよ」
だんだん実家が近づいてくる。
見慣れた景色、通学路、友達の家。
全てが色褪せていて、廃墟のような暗い町。
俺の育った町はこんなに廃れてしまったのか、それとも元々こんな暗い町だったのか。
世界中沢山の町に行ってきたけど、俺の育ったこの町が世界で1番廃れているように見える。
家が近づいてきたらドキドキしてきた。
さっきは冗談で言ってたけど、家族は本当に俺を受け入れてくれるのか?もう俺の帰る場所なんてないんじゃないか?
不安になる。
あと少し、もう少し。
そこを曲がって後はもう少し真っ直ぐ行ったら俺の育った家がある。
心臓のバクバクが最高潮になり、とうとう家が見えた。
でも車が止まってない。
どうやら誰も居ないみたい。
まだ時間も昼過ぎだし、仕事でもしてるのかな。

てか家の色変わってるし。
なんかちょっとリフォームして綺麗になってるし。
まだ誰も居ないみたいでちょっとホッとし、家の様子を見て懐かしんだり、近くを歩いてみたり。


こんなにも田舎だったか。
草木が生い茂り、まるでジャングル。
こんなところで育ったんだよな。
「誰も居ないならとりあえず風呂でも入りに行くか?しばらく風呂にも入ってないんだっぺ?」
確かにもう5日もシャワー浴びてないけど、そう言ってくれる2人にお礼を言い、やっぱりここで待ってますと伝え、2人とは別れた。
家をマジマジと見つめたり、辺りを観察する。なんか変な感じ。世界で1番田舎だよ。
ブログ書いたりしてしばらく待っていてふと思い出した。

そう言えば俺家の鍵持ってるじゃん。
鍵が変わっていなければ開くはずだと試してみると普通に開いた。
懐かしい家、でもやっぱりリフォームされてめっちゃ綺麗になってるし。

トイレもウォシュレットになってるし、自動で蓋開いたし。
とりあえず婆ちゃんに線香あげて無事に帰って来たことを報告した。
少しゆっくりしたら風呂に入って久しぶりに垢すりとかまで使って身体の汚れを落とす。汚すぎて全然泡も立たない。。
サッパリして昔自分の部屋だった場所へ行ってみるとちゃんと俺の服や荷物も置いてあって、きっとまだ家族として思ってくれてるんだなと感じた。

張り替えられて綺麗になった床には、ニュージーランドから日本へ送った安物のギターも無事に置いてあった。
弦を張り替えて鳴らしてみる。
もう全然弾き方も忘れちゃったな。
指も動かないし、久しぶりだから指がめちゃくちゃ痛い。。
また少しずつ覚えていこう。
しばらくのんびり過ごしていたら17時頃になって誰か帰ってきたみたい。
「ゆうへいか?なんだ、帰ってきたのか」
親父だった。
心の準備をしていなかったので変に緊張してしまう。
親父も同じ気持ちだったのか、挨拶もそうそうに、
「米の精米行ってくるわ」
と言ってすぐに出かけて言ってしまった。
はぁ、ドキドキしたぁ。。
気持ちを落ち着かせながら外で煙草を吸っていると少しして1台の車が家に入ってきた。
今度は誰だ?
お母さんの車ではないよな?
近くに住む兄貴の嫁さんと姪っ子たちだった。親父から連絡受けて来てくれたみたい。
皆んな久しぶりだ。
最後に会った時はまだ小さかった姪っ子たちも随分と大きくなり、上の子はもう来年中学生だと言っていた。


ちょっと緊張してる様子、そして何故かそれ以上に緊張してる俺。
子供の成長は本当早いなぁ。
でも子供たちのおかげでだんだん良い雰囲気になってきてリラックスしてきた。
そしてお母さんも帰ってきて、
「もう!!本当にあんたはいつも突然なんだから!!!」
そう言って、普段そんなこと絶対しないのにハグをしてきて、俺もそれに応える。
良かった、まだ俺はこの家に帰って来ても良かったんだ。
突然だったから何も用意してないけど、何が食べたい?と聞いてくれ、
「何でも良いよ、あるもので何か作って。でも納豆があれば良いな」
納豆も無かったらしく、兄貴の奥さんのありさちゃんがわざわざ、家にあるから!と、取りに行ってくれた。
リビングでビールを飲みながら夕飯が出来るのを子どもたちと一緒に待つ。
昔はこうやってリビングで家族と一緒に過ごすなんてことも全然無かったな。
仕事中らしかった兄貴も、
「トイレに寄っただけだ」
とか言いながら一瞬だけ顔を見せてすぐに仕事にと戻って行った。
何にもないとは言っていたけど、ドンドン料理が出てきてどれも最高に美味しかった。

久しぶりの味、久しぶりの温もり。
俺はこんなにも愛されていたんだな、何でずっと気付けなかったんだろう。
酒飲みだったはずのお母さんは酒を飲んでいなかったし、親父も結構な酒豪だったはずだけど、少し焼酎を飲んだらもう真っ赤な顔になっていて、煙草も辞めたらしかった。
2人とも俺の記憶の2人から比べ、すごく老けた。
この離れて過ごしていた6年という長い歳月を、実感せずにはいられなかった。
コメント
ありがとうございます!
久しぶりの団らんを満喫してます!
すごく心に沁みました。
職場の休憩室で涙ウルでした。